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器のコーティングとして用いられる、釉薬。それは、配合や種類を変えるだけでまったく違った質感や色合いを生み出すことができる。この釉薬にこだわり、様々な器の表情や質感を生み出しているのが、吉田太郎さんだ。そんな太郎さんの、釉薬へのこだわりや、ご実家である九谷焼窯元・錦山窯についての想いに迫った。

釉薬で変わる焼き物の表情と質感。2,000回以上のテストを重ね、導かれた良さとは。

—太郎さんといえば、釉薬にこだわっておられるイメージが強いです。

そうですね。釉薬でも特にこだわっている部分は、釉薬の表情や質感。でも、その2つがドンピシャに合うものってほんとに一握りしかないんですよ。テストピースは2,000種類以上あるのですが、いいなと思うものは手で数えられるくらい。本当に奇跡的な巡り合わせで、運命みたいなものです。


—そんなにも数多く試してみてもほんの一握りなんて、果てしないですね。釉薬のどのようなところに惹かれたのでしょうか?

僕は基本的に3つの原料で釉薬を作ってます。それぞれの配合がちょっと変わるだけで全然違う色になるし、同じ配合だったとしても窯の焚き方が違うだけでまったく違うものになる。だから無限なんですよ。それがすごいなって。組み合わせていく中で奇跡的に良い色になる場合もあれば、なかなか上手くいかないこともある。だからこそ、偶然の産物じゃないですけど、ロマンを感じるものがありますね。

—それは、偶然の産物ですね。ご自身の中でぐっとくる質感と表情は、どんなものなのでしょうか。

そうですね。今は、石のような滑らかな質感が気に入ってます。ザラザラしているところもあるんですけど、しっとりしているというか。触っていて気持ちいいんです。もちろん見た目も重要ですけど、どちらかと言うと人の手では作れないような釉薬の質感が好きです。でも、前は良くないなって思っていたものでも、今見ると良いなってなる時があるんですよね。なので、自分の中でも好みが時々で変化しているんだと思います。

—好みが変化するというのも面白いですね。そこまで釉薬にのめり込んだきっかけを教えてください。

小さい頃から絵付けのされている器や、金が使われている器を毎日使っていました。なので、そういったものが焼き物の全てだと思っていたんです。でも、大学で土ものに釉薬がかけてあるものを見て、しかも薪窯で焼かれていて。こんな物があるんだって、衝撃を受けたのを鮮明に覚えています。そこから釉薬の世界にはまっていきましたね。

—最後にご実家である「錦山窯」に対しての想いを教えてください。

そうですね。やっと今、家のことに目を向けられるようになった感じです。それまで、本当に家のことが嫌いで。

高校の頃の話なんですけど、高校入試って初めて自分で道を選んでそれに向かって努力して勝ち取るものじゃないですか。もちろん僕も必死に受験勉強をして、高校に受かったんです。でも高校2年生のときに先生から「お前は、爺さんのおかげでこの高校に入ったんだぞ」って言われて。それを聞いたとき、心の中に爆弾を落とされたみたいな感覚になって、すごく傷ついたんです。そういうことがあって家のことは、嫌いでしたね。大学もとりあえず入った感じなんです。でも、入った大学で焼き物や釉薬の面白さに出会えたので、そこはよかったなと思っています。

昔にいろいろとあったのですが、今ようやく家のことを意識し始めるようになりました。錦山窯と作家活動、両方のことを考えながら進んで行けたらなと思っています。

吉田太郎 Instagram
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錦山窯
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嘸旦
https://mutangallery.com/

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